台風一過の朝。
昨日は、コロナ予防接種の副反応で体調が最悪状態。
頭痛と倦怠感、そして38度弱まで上がった熱のせいで、1日何もできず、和室の畳にずっと伏せっていました。スマホをいじったり、音楽を聴いたり、うたた寝をしたり... 本を読もうとしましたが、頭痛がひどくて集中できません。
普段9千〜1万歩以上歩くのですが、昨日はたったの150歩!
横になっていたせいで、腰まで痛くなってしまいました。

まあ、副反応が辛いのは、免疫がしっかりできている証拠だから...
そう言い聞かせつつも、朝から晩まで続くと、せっかくの休みなのに!と思えてしまいました。
ほとんど無駄に過ごした昨日。でもお陰様で、体はゆっくり休めたのでしょう...

今朝には平熱に戻り、体の不調もすっかり戻っていました。 
お風呂を沸かし、ゆっくりと湯船に浸かります。

やっぱり、朝風呂は気持ちいいなあ...
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「おはようございます。体調はどう? もう大丈夫?」
顔を上げると、ペネロープさんが目の前に座っています。

「あれ、ペネロープさん? おはよう。お陰様で、すっかり体調も戻ったよ。」 
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「それは、よかったわ。昨日は辛そうだったから、私、心配で、あなたが寝ている間、ずっとお側にいたのよ。気が付かなかった?」 
「夢で、君と南の島の海辺を散歩したみたいだったけど...」
「ふふっ... それは私が案内したのよ。楽しかった?」
「うん、とっても。手を繋いで、愛おしい気持ちが高ぶって、君の肩に手を回した時、現実に戻ってしまったよ。まるで、村上春樹の小説みたい。彼の小説の中では、超自然現象が現実の世界に入り込んで来るんだ。羊男シリーズなんか。昔から大好きな小説家なんだ。」
「そうね、あなたの現実にも起こっているのかも?(微笑)」
「 そうだといいな。こんな美しい人が目の前にいる...」
「いつもありがとう。あなたって、本当に褒め上手ね。綺麗って言ってもらえると、やっぱりオンナは嬉しいものよ」

夢よ覚めないでくれ。
念の為頬をつねってみたけど、大丈夫みたい...
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「今朝は、君に庭の花壇を見せてあげるね」
「ありがとう。夜が明けたばかりで、風が気持ちいいから、ピッタリね!」
「今朝は、まだ雲の動きが激しいね。時折日が射したと思ったら、急に曇ったり...」
 
「さあ、ここで写真を撮ってあげるよ。う〜ん、やっぱりすごい美人だよ...」
「もう、本当にその言葉ばっかりね(笑)」
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「美しいバラね! なんていう品種なの?」
「プリンセス・ドゥ・モナコという名前なんだよ。グレース・ケリーという往年のハリウッド女優が、モナコ公妃になったんだけど、彼女に捧げられたものさ。グレース・ケリーは、こんな女性さ。」
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けっly
「なんて美しい人なの!」
「本当だね。でも、君も同じくらい、いやそれ以上に美しいさ。僕はだいぶ昔「真昼の決闘」という名作西部劇で彼女を見たな。」
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「どんな映画だったの?」
「ゲーリー・クーパー演ずる中年保安官は、新妻と結婚式を挙げて、町を出るその日に、かつて自らが逮捕した町の悪漢が、釈放され、復讐のため町に戻ってくるという。最初は、新妻とともに逃げようとするが、正義のために悪漢と戦う決意をする。そして皆に助太刀を求めるが、町の皆は恐れをなして誰も協力しようとしない。正義より命の方が大事という新妻は、必死で反対するが、彼は聞き入れない。彼女は、町に愛想をつかした酒場の女主人と共に町を出るが、銃声を聞いて、夫の元に戻る。そして、苦闘の中で悪漢一味を倒し、二人は抱き合う。最後は、戦いが終わって集まってきた町の皆の前で、保安官バッチを捨てて、街を去っていくという話だったよ。」
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「人の心の弱さ、事勿れ主義を、浮立たさせる映画だったのね。」
「ああ、そうだったね。昔は、正義は当たり前のように感じていたけど、僕も年を重ねて、逃げない心を保つというのは、簡単にできることではないことを知ったよ。」
「いい映画ね。今度、私にも見せてちょうだい。それにしても、写真の二人、まるであなたと私みたいね...  好きよ。(ニッコリ)」
「えっ?!  ....嬉しいよ、とっても(ニッコリ)」
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「この乳白色なバラは、なんていうの? まるで香水の香りがするわ」
「このバラは、ホワイトクリスマスさ。白バラの名花中の名花と言われているよ。これほど素晴らしい香りのするバラはないと思う。このバラを見て思い出したのが、数日前に亡くなった歌手オリビア・ニュートン・ジョンだね。70年代半ば〜80年代半ばのスーパースターだった。こんな女性さ。」
僕は、ペネロープさんに、2枚のCDを見せた。
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「彼女もとても美しい人ね...」
「本当に美しく、また歌声が素晴らしい女性だった。洋楽に初めて触れた中学の頃、カーペンターズと共にオリビア・ニュートン・ジョンは、最初に知ったアーティストだったんだ。中学2年の時かな、日本武道館でコンサートをやって、クラスメイトが観に行ってパンフレットを見せてくれったけ。」
「どんな歌声なのかしら? 私にオススメってある?」
「やはり、1番は「そよ風の誘惑」だと思う。君をイメージさせるような素敵ささ!」
「へえ、聴かせて!」
「わかった、ちょっと待って」
僕は、彼女の耳に愛用のJVCワイヤレスイヤホンXXシリーズを付けてあげた。
そして、CDから取り込んだ曲を再生した。

「わあっ、なんて素敵な歌声なの!」
「歌のタイトルそのものの、なんとも言えない心地よさのある名曲だよね。そして、君と一緒に聴きたい曲といえば、コレ。「Suddenly/恋の予感」だね。」

「なんて素敵な愛の歌なの!私もあなたと一緒に、こんな風に歌えたら嬉しい...」
僕は、思わずペネロープさんを抱きしめた...

「ペネロープさん、他にもいい曲はたくさんあるんだけど、この「Magic」が特に好きだなあ。きらめくリズムとメロディ、美しい彼女の歌声の三位一体。凄くカッコいい曲だと思ったよ、当時。ザナドゥというアルバムに収められているんだけど、FMの深夜放送でアルバムを流してくれたので、カセットテープレコーダーでタイマー録音して何度も聞いたよ。」
 「いろいろなタイプの歌に挑戦しているのね。」
「うん、彼女は凄い才能と美貌だったけど、それだけでは長く生きていけないのが世の中の流行さ。彼女は、生き残るために、果敢に挑戦していったというイメージだよ。可愛いだけのお姫様ではない、自分の可能性を信じて戦うお姫様というか... 憧れの美しいスーパースターだったよ。それだけに、歳をとって、長年乳がんと闘ってきて、最後に旅立たれて行った。しんみりした気持ちになるし、悲しい。人の命は、限りあるんだね。当たり前のことを改めて思い直したよ。」
「そうね。皆、精一杯生きて、悔いも残しながら、でも気持ちに折り合いをつけて、旅立つのかもしれないわね... あなた、最後までしっかりよ。」
「ありがとう。最後は、彼女の初期のヒット曲「ジョリーン」を聴いて、彼女の冥福を祈ろう。アメリカの民謡とも言えるカントリー調の曲だよ。」
 
さあ、他にもいろいろなお花が咲いてるよ。
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「これは、ニチニチソウとマリーゴールドだよ。」
「花壇が明るくなったかのようね。素敵だわ。」
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「ほら、こちらは、ツユクサ。雑草だけど、可憐な儚い花を咲かせてくれるので、一部は抜かずにおいたんだ。万葉集にも、ツユクサのはかなげな雰囲気を、恋する人の心の移ろいやすさになぞらえて、詠まれた歌がいくつかあるそうだよ。」
「万葉集の時代からねえ... どんな歌なのかしら。」
 「月草(=つゆくさ)のうつろひやすく思へかも 我が思ふ人の言(こと)も告げ来ぬ。ツユクサのようにうつろいやすいからでしょうか 私が想うあの方が何も言ってこないのは。」
「人は、昔から身近な何かに惹かれて、そこに自分の想いを投影させるのね。万葉集って、奈良時代に作られたんでしょう? 今から1300年くらい前なのね。何代くらい先祖を遡るのかしら?」
「そうだね、調べてみよう。室町時代までは、男性は10代後半・女性は10代半ばで結婚するのが普通で、江戸時代から男性は20代後半・女性は20歳前後で結婚するようになったそうだ。それからだんだん晩婚化していったようだ。大雑把に西暦1600年まで400年間を23歳で割ると17代。1600年から700年までの900年を16歳で割ると56代。合わせて73代のご先祖さまがいらっしゃる訳だよ。」
「みんな一斉に並んだら、壮観ね!(笑)」
「本当だね(笑) 親兄弟とは、懐かしいなあ、から始まって、ご先祖さんの紹介の数が凄いだろうね。兄弟や両親のまた両親となると、横への広がり方が半端ない!」
「天国に行って歓迎の酒盛りに呼ばれたら、出席者は日本武道館でも入り切らないかもしれないわよ(笑)大賑わいの祭りが連日、あちこちで開かれたりなんかして。」
「凄い想像力だ!(笑)そんな未来が待っていたらいいね。生きているうちは、そんな風に信じるべきだと、高名な先生が言っていたよ。どこかの科学者が。それが精一杯幸せに生きるコツだって。」
「ふ〜ん、確かにそうかもしれないわね」
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「ペネロープさん、こちらはハイビスカスだよ。あっ、ちょっと待ってて」
「何かしら」
「ほらネ! 鏡で見てみて」
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「とても綺麗だよ」
「ありがとう! 本当にありがとう!」
「昔、河合奈保子さんってアイドルが、ハイビスカスを髪飾りにしていた時があったよ。昔、ファンだったんだ。この写真。」
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「この女の子、とても可愛いわね」
「うん、素直で、いつまでも世間ずれしないアイドルだったよ。歌もうまかったし、音楽がすごく好きで、最後は自分で作詞作曲もやっていたみたい。彼女も挑戦して、どんどんいい歌手になっていった。」
「挑戦て、大事ね。そのためには、好きなものを見つけることなのね。」
「そう思う。誰でも得意不得意はある。好きこそものの上手なれで、やはり得意を生かしてプロになることが、結局、自分も社会もいい方向に向かうのだと思う。」
「人の生き方には、色々ためになることが詰まっているわね。」
「本当だね。君とこうして話していると、僕もいろいろなことに気がつくよ。ありがとう。」
ペネロープさんは、ニッコリ頷いた。
....それにしても、ペネロープさん、ハイビスカスが似合う。
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本当に可愛い。
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「こちらは、アイスバーグだよ」
「本当にたくさんお花が咲いているのね。本当にありがとう。私、そろそろ行かなくちゃ... また来るわ。好きよ。また会ってね!」
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えっ!?と思って、我に帰ると、 湯船に浸かっていた自分がいました。
今日は、ずいぶんペネロープさんと話をしました。
楽しかったなあ...

夢見心地のまま、バスルームから出ると、家内が朝ご飯を用意してくれていました。
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「昨日はずいぶん辛そうだっけど、調子は戻った? お母さんは、いつもお父さんのことを考えているのよ」
えっ!一瞬ペネロープさんが再び目の前に現れたと思ったら、家内でした。 
家内の若い頃とペネロープさんって似ているな...

「どうしたの? ぼーっと私の顔、まじまじ見つめて...  まだ調子悪いの?」
「いや... もう大丈夫、大丈夫。」
「じゃあ、今日は、午前中、お墓参りに行かなくちゃ。」
「うん、わかった」