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ここ半年くらい、バイクに乗り始めた頃に影響を受けたレジェンド・ライダー達を振り返って、持っている読み返したり、高値推移の今では貴重な彼らの本が安くなるタイミングを常に見張っていて、購入しては読んでいます。摺本好作さん、堀ひろ子さん、そして最も影響を受けた賀曽利隆さん。生涯旅人を掲げ、今70代の現役レジェンドライダーでもあります。 

この前に読んだ「50ccバイク世界一周2万5千キロ」がとても面白かったので、姉妹本の本作を探していました。これも3千円ほど出せば入手できるのですが、そこまでは古本に出せません。 (堀さんの本は、5千円が相場だったので仕方なく3.5千円出しましたが)やがて、メルカリに1千円で出品されたので、すかさず買いました。

この本も面白かったですね。

時代は、1989年8月に遡ります。この時の自分を思い出しながら、過去の時代の空気を再び感じながら、読み進めていました。
私は、入社4年目27歳の夏。下期計画作成のため、会社泊まり込みもあった超多忙な時期でした。千葉にある工場勤務。そして、翌月に結婚式を控えていました。
賀曽利さんは、日本橋を出発し、原付バイクのスズキハスラー50で、工場の目の前の国道を通って行ったのでした。
自分は、その数ヶ月前に、夜間盗難にあったRZ50から、今も大事に乗っているNS50F AEROに変わったところでした。

賀曽利さんのツーリング紀行を読んでいると、ハッとするような視点に驚かされることが多いです。
今回もありました。雲仙岳近くのびっしり築かれた段々畑。ここでは、ジャガイモが作られているとのこと。それがそれまで旅してきた北海道の大陸的な広大な畑のジャガイモと戦っている。狭い効率の悪い段々畑では、勝負にならないので、温暖な気候を活かして3毛作で収入を確保しているとのこと。北海道のジャガイモの価格に一喜一憂しているという言葉に、実感がこもっていると思いました。

世界を日本を、バイクで、自分の足で何周もしている人なので、違う場所に住む人々達の暮らしの成り立ちの違いを鮮やかに解説し、一方で、共通点から実は遠い過去の文化の伝搬に行き着いたりと、ほう!と思うことが多く、面白いのです。

単にバイクを走らせ、風を感じていただけでは、こんな紀行文は書けません。地元の人と興味を持ってよく話し込んだ結果なんでしょうね。
一方で、賀曽利さんは、有名な民俗学者の下で、日本の民俗学研究機関にも関わっていたことを時々述べられています。その学者は、宮本常一さんといい、調べてみると柳田国男と並ぶ 民俗学者でした。
人々の暮らしや使う道具から、歴史を紐解いていく民俗学の目が身についているから、 彼の書くツーリング紀行は面白いのでしょうね。

北海道や沖縄では、ツーリング聖地の当時の姿や、夢を実現した若者達の姿を活写しています。
バイクツーリングばかりでなく、徒歩で日本縦断や自転車世界一周などの若者も出てきます。
それに比べると、自分のバイク旅は、本当にささやかなだなあと思いました。
でも、人それぞれ、置かれた境遇も惹かれるものも違います。 

それで良いのだと思いました。

でも...  もしかしたら、自分も日本一周できるんじゃないか? そんな気にもなるのでした。
でも...  悪天候のバイクで走るのは嫌だからなあ...
アコードワゴン で?

これって、亡き父が夢見た「キャンピングカーで寝泊りしながら日本一周」と同じだと思いました。親子は考えることが似てくるものなのでしょうか?(笑)